第二回韓日未来フォーラム / 下村あい


12月20日・21日、ソウル女性プラザで韓日社会文化フォーラムが主催した「第2回韓日未来フォーラム」が行われた。もともと韓国の若者文化に興味がある私は、このフォーラムで同世代の新しい友人を作り、実際に韓国の若者の流行や、日本人のイメージを聞くことができるのではないかという些細なきっかけから、参加することにした。エントリーシートを書く時点で、「既存メディアと日韓関係」について考える節があったが、日本で報道される韓国についてのニュースには、多くの疑問点があったため、今回のフォーラムは大変興味深いものだった。


1日目のプログラムは、「立場反転ディスカッション」というグループワークから始まった。私のグループは韓国人が3人、日本人が4人の計7人であった。プログラムの内容は、日本人4名は、韓国人から日本人がどう思われているかを考え、箇条書きで示す。また、韓国人3名は、日本人から韓国人がどう思われているかを考え、箇条書きに示すというものであった。このプログラムのおかげでグループの雰囲気も和み、テンポ良く会話が進んだと思う。お互い模造紙にどう思われているかの箇条書きを示したところで、相手国に答え合わせをしてもらった。日本人が、韓国人にどう思われているか示したものが以下である。

・日本人は歴史を知ろうとしない

・本音と建前

・パンやケーキがおいしい

・全体的に英語能力が低い

・ファッションが多彩

これら5つはすべて○(韓国人は日本人に対してこのイメージを持っているという意味)という答えであった。このプログラムでは主に「日本人は歴史を知ろうとしない」、「本音と建前」について、討論をした。その中で、韓国人が日本人にどう思われているかを考えた相手サイドの模造紙にも、一つ目に歴史認識について書いてあったため、私は大変驚いた。簡単に言えば、「相手国のイメージは?」と聞かれた時点で、歴史認識について思いつくというのは、日本人として情けない部分であったし、認識の低さを自ら理解しているのだということもわかった。そして、「本音と建前」については、日本人には本音と建前を使い分けることが、ある種の美徳となっているのかもしれないと発表すると、韓国人はそこに違和感を感じていた。これ以外にも項目はいくつかあったが、はっきりとバツで答えてもらった点もあれば、△で「人それぞれだ」という回答もあった。「韓国人は、日本人は、」というようなくくりで考えてしまいがちだが、国籍の前に個人の個性を見つめることも意識しなければならないとも考えたプログラムであった。

次に、既存メディアのリアルな実態について、朝日新聞貝瀬ソウル支局長の講演を聴講した。講演の中で2つの記事があり、一つは『朴大統領を「今週のバカ」週間文集記事が韓国で波紋』、二つ目が「731部隊まで動員した安部首相の極右妄動」というものであった。私はこの二つの記事をみて、実際に貝瀬ソウル支局長の意見も交えて考えてみたが、やはりお互いの国のイメージや先入観で物事を判断している国民がほとんどだと考えた。そして、新しい発見としては、メディアの商業主義がとてつもなく、国のイメージをお互い悪くしているということだ。例えば朴大統領について悪い意見を書くと、日本ではその記事が売れる。だから書き続ける。韓国でも同じである。安部首相について悪い意見を書くと、韓国ではその記事が売れる。会社によって趣は異なるそうだが、このような事実に大変驚かされた。情報を与える側として、このような商業主義は通用してはならないと私は考える。貝瀬ソウル支局長の講演で、「メディアに求められる本当の役割」とは、①真実を伝える。②記事の見方や考え方を示す。ということであった。①に関しては、決して簡単ではないし、ある種究極の回答でもあったが、②については、強く同感した。筆者の考えを押し付けるように書くのではなく、文章の書き方を問いかけるようにしたり、2つの(逆の)意見を書いてみるなど、少し工夫するだけで、読者は自分の意見を持つことができるかもしれない。貝瀬ソウル支局長の講演は、双方の国の視点から、意見を聞くことができたので大変貴重な時間であった。

そして1日目のプログラムが終了し、親睦会が行われ、新しい友人もたくさんできた。親睦会の後に座談会があり、また新しいメンバーで日韓関係について話した。座談会では、笹山実行委員長を中心に話をしたが、アベノミクスについてや、日本でどんな嫌韓運動が行われているか、韓国人に伝える場面があった。日本人でも嫌韓運動を怖がっている人もいるということを伝えたかった。日本人全てが嫌韓であるというような考えを持つ人はその場にいなかったが、個人的に、少しでも日本人への違和感を解消してもらいたかった。

2日目は、簡単なマルバツ問題のクイズで頭を起こした後に、ポスターセッションに向けてグループワークを始めた。テーマは「既存メディアと日韓報道について」であった。このフォーラムを軸となるテーマだ。グループでテーマについて話し合った結果、日韓報道の問題点は「中間層に与える悪意を含む報道の仕方」だと考えた(中間層とは、韓国に良い関心を持ってる人、悪い関心を持ってる人と分類したとき、どちらにも属さない、韓国に関心がなくメディアの情報を受動的に得る人のことを示す)。そして、問題の原因はメディアの商業主義であると考えた。この意見は、強く同感した。実際に私は韓国に興味があるが、メディアや日韓の歴史について深く知ろうとおもったことはなかった。よって中間層に当たるのかもしれないと思ったが、報道される内容を全て受動的に得ることはほとんど無いため、やはりプラスの関心側であると気づいた。グループでは意見をまとめたポスターをつくり、各班にプレゼンをし、フィードバックをもらった。「客観的な報道」という解決策の部分が曖昧であったため、きつい指摘をいくつか受けた。よって、具体案として、お互いの国のテレビで、最も多くの人がテレビを見るゴールデンタイムに日韓に関するニュースやドキュメンタリーを放送するということをあげた。ターゲットは中間層の若者であるため、若者の関心を引くような出だしで構成することも有力かもしれないと考えた。

次に「日韓友好未来のために若い世代が考える最も重要なこととは」というテーマで新しいグループをつくって話し合った。具体案として、社会問題でもある孤独死が多い今、ボランティアを通じて、日韓交流をすればいいのではないかと考えた。例えば、韓国人の老人に日本人の学生数人をパートナーとしてつけ、交流を深めるというようなことだ。これら具体案をポスターにして全員の前で発表した。

以上で1泊2日のプログラムは終了した。この2日間で得た知識や、実際に味わった刺激はこれからの日韓関係の未来を考えて行く上で、かならず必要不可欠なことであり、また、このフォーラムでの新しい出会いは私にとって財産となった。実行委員会の方々に感謝したい。